教養としての映画のような、もしくは映画史概観のようなラインアップです。
名画を観る理由は、例えばモーツアルトの曲を聞くようなものだと思います。それゆえ、時代を超える美しさを体験できる、人類の宝に遭遇できます。
洋画編
1.ピクニック ジャン・ルノワール
あの印象派の画家、オーギュスト・ルノワールの息子の映画。DVD表紙に映っているヒロインがバタイユの最初の妻、再婚でジャック・ラカンの奥さん。助監督にヴィスコンティやブレッソン。これだけでも必見。解説はこちら。
2. 鏡 アンドレイ・タルコフスキー
「物質と記憶」、「失われた時を求めて」、これらを個人の記憶とあわせたような映像。 霊感の強い人なら、この映画の、特に祖母の幻影と共に実在として存在した湯気が消えていくシーンを鳥肌が立ちながら経験したことがあるはず。
3. 営倉 ジョナス・メカス DVD 日本語版未発売
「リトアニアへの旅の追憶」よりインパクトが強い作品。軍隊の野蛮性(非常事態への人間の鍛錬では仕方ないが)を楽しく描いた作品。一部の日本のブラック企業では今でも日常な光景かもしれない。
4. 捜索者 ジョン・フォード
真偽もエビデンスも不明だが、先住民を追いやったモニュメントバレー近くで核実験があった。そして西部劇の関係者は皆、癌で死ぬという。。。
5. カビリアの夜 フェデリコ・フェリーニ
道を譲ることも電車で席を譲ることもできない社会の我利我利亡者の到達点は。拝金主義という一神教の中に清い魂が存在するとどうなるか?を描いた作品。
6. 処女の泉 イングマール・ベルイマン
この世には魔界が存在する。もし犯罪を犯したものが、治外法権の天竜人であるならば、被害者に救いはないが、この映画には神が、救いがある。
7. 緑の光線 エリック・ロメール
日本にはバカンスなど存在しないので、このフランス映画のようなバカンスの過ごし方で嘆くことはない。会話中心の映画で心理を繊細に描くことの見本のような映画。ラストに美しい光線と共に恋が始まる。夜明け前にみたい作品。
8. マンディンゴ リチャード・フライシャー
アメリカならば不倫してできた子が違う肌、その結果に人種差別と怒りでブチ切れそうだが、日本ならば同じ肌だが、顔が似つかない(むしろ親父よりカッコよく頭が良い子ができたらどうなる?)、墓まで持ってく秘密の話。
9. さらば青春(Good-by Youth Addio Giovinezza!) アウグスト・ジェニーナ 弁士:沢登翠 DVD未発売
人生誰でも来る楽しい青春時代との別れ。弁士がいて始めて引き立つ作品。日本の宝、弁士の沢登翠先生のHPでは音声サンプルが聴けるので一度ご視聴ください。
10. ベルリン・アレクサンダー広場 ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
ファスビンダーの大傑作。ナチスと受難の相が出ている、男の人生の物語。でも男の人生ってこんなもんだよね。。遠い昔に専修大学の教室で見た記憶が。。教授の解説が素晴らしい思い出となっています。
邦画編
1. 婦系図 マキノ雅弘 DVD未発売
問答無用の国宝にしなければいけない大傑作。山田五十鈴と長谷川一夫の湯島の白梅のシーンは全人類が見るべきものである。男女の別れの名シーンは駅よりも梅が似合う。
下記の写真は三隅研次 監督ヴァージョン
2. 丹下左膳余話 百萬両の壺 山中貞雄
現代日本の官僚方式は江戸時代の方法とあまり変わらない。それをコミカルにした大傑作。ヒロインは本物の芸者で新橋喜代三。作中で隠喩にとんだ猥歌「お藤の唄」を色っぽく歌う。えゝ しよんがいな ♪ 矢場に 矢が降る 雨が降る♪。こんなお嫁さんなら幸せだね。
3. 山の音 成瀬巳喜男
バブル崩壊と共に、亭主関白も崩壊。しかしながら主従関係のような夫婦関係はいまだにある。「おしん」と同じく、耐えて、耐えて、時間(自分の人生)はかくのように過ぎていく。。日本の女性の時間軸を描いたような作品。
4. 雨月物語 溝口健二
田中絹代がとにかく素晴らしい。昔の女性スターって本当に芸があったのね。宮木役に関しても、このような素晴らしい人間性の女性、演じれるのは知性の賜物であろう。
5. デルス・ウザーラ 黒沢明
黒沢明の映画は70年代以降はダメだと思っていたが、本作は黒沢組がいなくても輝いていた!輝いていた頃の美しい黒沢を思い出す、素敵な1作。
6. 修羅 松本俊夫
原作は鶴屋南北、キャストは唐十郎! 見応えのある、かつゴダールのような、いやペキンパーのような、スタイリッシュな時代劇。松本俊夫はピーターを主演させた「薔薇の葬列」も素晴らしい。
7. 秋刀魚の味 小津安二郎
小津先生が亡くなる前の最後の作品。かつて自分が池上線沿線に住んでいたのも小津先生との縁を感じます。ゴダールが池上本願寺に墓参りに行ったように、我々もお参りに行かなければ。
8. ツゴイネルワイゼン 鈴木清順
霊感のある人ならピント来るであろうサラサーテの盤。借りたものを返さずにいるとあの世から使いを出される。。。
9. 青春の蹉跌 神代辰巳
人生の分かれ道。野心の代償とたたり。だが、当事者には現実的選択肢はない。さながら森鴎外の「舞姫」というところか。
10. 阿賀に生きる 佐藤 真
映画美学校、第3期 熊倉克久君が助監督を努めた、日本映画史上に燦然と輝く傑作。ドキュメンタリーの巨匠 小川紳介 と共に日本映画界の至宝。日本の社会を熱く見よ!
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